自然の恵みと災いからとらえる
「土地利用総合評価」

「土地利用総合評価」とは

豊かな自然は、私たちの社会や生活に多くの恵みをもたらし、人々が暮らすためになくてはならない存在です。そんな大切な存在である自然も、時として、災いをもたらす存在になります。豪雨に伴う洪水や土砂崩れなど、数多くの災いと共存しながら私たちは生きていかなくてはなりません。

人々が暮らす地域の環境や土地の使い方(土地利用)はさまざまです。市街地や工場などの都市的な土地利用と、河川・森林・農地などの自然的な土地利用があり、それぞれの地域で土地の使い方が大きく異なります。

土地の使い方によって、自然は、私たちに豊かな恵みをもたらすこともあれば、災いをもたらすこともあります。自然的な土地利用は、生態系と生物多様性を基盤としたさまざまな「自然の恵みの豊かさ」(自然の恵み)をもたらす一方、洪水や土砂崩れといった危険にさらされている都市的な土地利用は、さまざまな「災害リスク」(自然の災い)をはらんでいます。

私たちの社会や地域における土地の使い方は、自然の恵みと災いを総合した視点から見ると、いったいどのようになっているでしょうか。

「土地利用総合評価」では、土地の使い方によって災害リスクを回避している程度を示す「災害からの安全度」と、生態系・生物多様性がもたらす「自然の恵みの豊かさ」(生態系サービス)の観点をもとに、土地利用を総合的に評価しています。

土地利用の現在を確認し将来の様子を見てみることで、土地利用の意味や影響を考える機会を提供します。

「土地利用総合評価」の評価方法とデータの読み方

①「災害からの安全度」と「自然の豊かさ」の二次元マップ

それぞれの自治体における土地利用を、「災害からの安全度」と「自然の恵みの豊かさ」の2つの観点から評価しました。

さまざまな指標で評価した「災害からの安全度」を縦軸に、さまざまな自然の恵みを総合した「自然の恵みの豊かさ」を横軸にした二次元マップを使用しています。「災害からの安全度」および「自然の恵みの豊かさ」の組み合わせによって、それぞれの自治体の土地利用が評価され、凡例にある色を用いて評価結果が地図上に表示されています。

二次元マップと地図で示す「災害からの安全度」と「自然の恵みの豊かさ」は、複数の指標を総合しています。

  • 災害からの安全度:4つの安全度の指標の平均
  • 自然の恵みの豊かさ:供給・調整・文化的サービスの類型ごとに指標を平均したのち、3類型の平均

二次元マップの見方として、以下のようなものが考えられます。

例えば、同程度の「自然の恵みの豊かさ」のスコアであっても、「災害からの安全度」が異なることがあります。その主な理由は、「自然の恵みの豊かさ」をもたらす自然的な土地利用が似ていても、災害の危険(ハザード)にさらされた都市的な土地利用の割合に違いがあるためです。

また、「災害からの安全度」が同程度であっても、「自然の恵みの豊かさ」のスコアが異なることがあります。その主な理由は、災害の危険(ハザード)にさらされた都市的な土地利用の割合が似ていても、「自然の恵みの豊かさ」をもたらす自然的な土地利用の多さが異なるためです。

他にも、いろいろな比較をしてみると、これまでは分からなかった土地の使い方の詳細が見えてくるでしょう。


②「災害からの安全度」と「自然の恵みの豊かさ」に関する詳細な評価指標のレーダーチャート

「災害からの安全度」と「自然の恵みの豊かさ」を総合的に評価した二次元マップでは、さまざまな観点から評価した「災害からの安全度」や「自然の恵みの豊かさ」の詳細を把握することができません。そこで、すべての評価指標を網羅的に可視化したレーダーチャートを作成しました。

それぞれの自治体において、「災害からの安全度」や「自然の恵みの豊かさ」の詳細は異なります。総合評価の二次元マップに加えて、このレーダーチャートを用いることで自治体における土地利用の特性をより具体的に把握することができます。

今後、J−ADRESでは将来(2050年頃)の土地利用についてシナリオ分析を行い、それぞれの自治体において「災害からの安全度」をどこまで増やすことができ、それと同時に、「自然の恵みの豊かさ」をどこまで確保できるかを評価した結果を追加する予定です。

土地利用総合評価を通して、現在と将来の土地利用の意味や影響を考えるきっかけを提供できれば幸いです。