「自然の恵みの豊かさ」とは
長い進化の歴史を経て、現在の地球はつくられています。私たち人間を含めた多様な生命が進化してうまれた生物多様性とそれを取りまく生態系の営みが、さまざまな恵みを私たちに与えてくれます。
例えば、水や空気、栄養のある土壌、それらを生み出す多くの生き物の働きがなければ、お米や野菜といった食糧をつくることはできません。食べ物だけでなく、私たちの身の回りにあるあらゆるものは、生態系と生物多様性から生み出されているのです。こうした生態系と生物多様性がもたらす「自然の恵みの豊かさ」を「生態系サービス」と言います。
しかし、これまでのさまざまな人間活動によって、生態系が劣化し生物多様性が失われています。生態系と生物多様性がなくなれば、生態系サービスを受けることができなくなり、私たち人間も生きていくことはできません。
ここでは「自然の恵みの豊かさ」を評価するため、「生態系サービス」に含まれるいくつかの「供給サービス」「調整サービス」「文化的サービス」を評価しました。
「供給サービス」は、生態系や生物多様性がもたらす食べ物、木材、繊維、そして水や医薬品など、私たちの衣食住を支えるものです。「調整サービス」は、大気や水をきれいにし、気候を調整し、自然災害を防ぐものです。「文化的サービス」は、生態系と生物多様性によって得られる、癒しや野外のレクリエーション、音楽や俳句など、私たち人間の生活を心豊かにしてくれるものです。
ここでいう「自然の恵みの豊かさ」とは、さまざまな「生態系サービス」を総合的に評価したものです。
生態系サービスの評価
供給サービスとして、今回は食料生産ポテンシャルの1つの指標を評価しました。水田や畑などの農地生態系は食料生産の場であり、その面積を食料生産が可能な指標として評価しました。食料生産は代表的な供給サービスですが、他にも多くの種類の供給サービスがあります。
調整サービスとして、今回は炭素吸収や栄養塩除去などの10つの指標を評価しました。森林などの植生は、気候の調整や大気・水の浄化など、さまざまな調整サービスをもたらすことが知られています。国内外で用いられている標準的な手法により、これらの調整サービスを評価しました。
文化的サービスでは、今回は緑地へのアクセス度などの3つの指標を評価しました。陸域や水域の生態系や生物多様性は、精神的なやすらぎやレクリエーションなど、多種多様な文化的サービスをもたらします。多様な文化的サービスの評価手法は今なお発展中ですが、今回は、日本全国を対象に評価可能な文化的サービスを評価しました。